第十一章 間取り図作成代行サービス

帰国後、会社近くにある日本語学校、専門学校のベトナム人留学生数名が僕の店に来てくれた。

その理由は、僕はタイビン滞在中日々の様子をFacebookに投稿していた。それを見たベトナム人留学生が僕に興味を持ってくれたようだ。

それにしてもベトナムでFacebookの影響力や拡散力は凄い、今回は東京や大阪からも友達申請やダイレクトメールをいただいた。将来東南アジアでビジネスを立ち上げたい僕にとってFacebookはベトナム人とのかけがえのないコミュニケーションアイテムになっていた。

ちなみに僕がFacebookを始めたのは会社を設立した2014年10月頃。その当時周りからSNSの時代だからFacebook始めた方が良いよ。と言われ何気なく始めたアイテム。

当初オシャレな物件・ペット飼育可など希少物件を集め他社の見様見真似で投稿していたが、まったく効果は無く使われないアイテムになっていた。

それが今となっては僕にとってかけがえのないアイテム、それも無料で使えるとは創業者のマーク・ザッカーバーグに感謝したい。

翌月、僕は賃貸ショップのフランチャイズ本部(東京)へ挨拶に行くことになった。ちなみにそのフランチャイズは僕が以前勤めていた会社の事業。久しぶりの古巣訪問で元上司や同僚に会えると思うと楽しみだった。

当日、フランチャイズ関係者との打ち合わせは午前中の一時間程度で終わり、近況報告兼ねて社長とランチに出かけた。僕はここ数年間の成功や失敗、いやほぼ失敗談を話、これからビジネスで大逆転を狙い東南アジアへ挑戦したいことを伝えた。すると

「そうそう、その話聞いたよ。最近ベトナムに行くんだって、ベトナムはどうよ。面白いビジネスあったらまた一緒にやろう」

何気ない会話だったが僕にとって東南アジアへの挑戦は、海の物とも山の物ともつかない先の見えない挑戦が続いていた。その中で古巣の社長に共感や評価、本気なのか、冗談なのか分からないが協業の話をいただけたことは素直に嬉しかった。

後日、いつも通り東南アジアへの事業計画を考えていた。しかしどの事業計画も初めは良いのだがある程度進むと自分の強み、優位性、差別化で行きづまっていた。そんな中ふと古巣の社長の言葉“面白いビジネスあったらまた一緒にやろう”を思い出した。

本気なのか、冗談なのか。

確かに古巣のスケールメリットを活かすことが出来ればビジネスチャンスは広がる、成功する確率は格段に上がるだろう。ただここで僕の感情的な問題もあった。

それは数年前に僕は神奈川で独立、失敗。ほぼ倒産寸前で浜松に戻り、その立て直しで古巣のフランチャイズに加盟させていただき助けてもらった身。

そして今回の東南アジアへの挑戦も古巣の力を借りないと出来ないものなのか。当然フランチャイズや東南アジアへの挑戦は、古巣にとってメリットがあって成り立つものだが情けない気持ちでもあった。

数日間、僕は東南アジアへの挑戦を古巣に寄せたビジネスモデルで作るべきか、そうでないか、ここが岐路だと思い真剣に考えた。そして出た答えが、

古巣に寄せよう。

その理由は、先ほどお話しした通り東南アジアへ挑戦する上でどうしても僕一人で解決できない課題があった。そして脱サラし色々なことへ挑戦してきたがもう僕に時間やお金は無かった。

だからこのタイミングで古巣と協業し、最短で確実に東南アジアへ進出できるなら周りからどう思われようと関係ない。ここはしっかり古巣と協業するのが賢明だと感じたからだ。

また東南アジアへの挑戦について古巣は本気なのか、冗談なのかは分からなかったが、それは古巣のメリットになるビジネスを僕が立ち上げれば古巣は本気になるだろう、だから僕はそんなことを深く考えず自分でしっかりとビジネスモデルのプロトタイプ作りに集中すれば良いと考えた。

その日から協業できるビジネスモデルを必死で考えた。外国人留学生向けの賃貸仲介、オフショアで駐在員向けの賃貸仲介など賃貸仲介関連のビジネスが浮かんだ。

ただこれは既存ビジネスと重複し競合する部分も多い。またそれなりの人手やサイト作成費用も発生する。あと僕の性格上以前登った山と同じような山登りでは途中で飽きてダメになるだろうと感じた。

そんなある日、僕は友人と酒を飲んだ際に常々言っていたことを思い出した。

「この現場を引退したら賃貸仲介の裏方の仕事(webメンテ)を立ち上げて、それでもしながらリゾート地でゆっくり暮らしたいよ」

もしかしてそのタイミングは60,70歳ではなく、今かもしれない。東南アジア×オンラインビジネスをこのタイミングで始めるのはどうだろうか、これで一発大逆転を狙おう。

数日後、そうだベトナムを作図拠点とした間取り図作成代行サービスはどうだろうか。

これなら僕一人、現地スタッフ一人、パソコン一台あれば簡単に始められる。またパソコン一台あれば世界中を旅しながら働ける、これは面白そうだ。

すぐにマーケティングを始めた。するとそのようなビジネスを手掛けている会社を複数社見つけ、各社数日間掛け分析した。

その結果、作図拠点は中国、カンボジア、ベトナムと僕と同じようなマーケット、品質、単価、受発注方法どれをとっても僕のネットワークを使えば十分立ち上げは可能だった。

また近年社会的にみなし残業へ行政やメディアが騒ぎ立てている。賃貸仲介業は労働集約型のビジネスで時間にルーズな業界、これを正すとなると将来は今行っている作業の何かを外注しなければならない。そして間取り図が一番外注しやすいと感じた。

そして僕は数年前であるものの古巣の外注先、単価、発注数を知っていた。そのためどの程度のサービスを作れば良いのか検討しやすくチャンスは十分あると確信した。

僕は早速、間取り図作成ソフトをインターネットで調べ購入、ベトナム人に影響力のあるFacebookで求人を始めた。するとすぐに以前ダナンを案内しれくれたハムから連絡がきた。僕はハムに先のことは分からないが、僕と一緒に新しい仕事へ挑戦しないかと聞いた。

一週間後、ハムから

「コノシゴト ヤリタイ コンドニホンニイキマス オシエテクダサイ」

ハムも帰国して良い仕事が見つからず悩んでいたのだろう。これでプロトタイプを作るビジネスパートナーは決まった。また僕のお店にベトナム人留学生が2名アルバイトしていたので彼女たちも仲間に入れ、早速間取り図作成代行サービスの立ち上げ準備に入ることにした。

つづく。

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